はじめに|太陽光発電リースという選択肢
太陽光発電を導入したいと考えているけれど、初期費用の高さがネックになっていませんか?実は、初期費用100~300万円ほどのコストを事業者が肩代わりしてくれる「リース契約」という選択肢があります。
この記事では、太陽光発電のリース契約について、メリット・デメリット、月々の料金相場、他の導入方法との比較まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。初期費用を抑えて太陽光発電を始めたい方は、ぜひ最後までお読みください。
太陽光発電リースとは?基本的な仕組みを理解しよう
リース契約の基本構造
太陽光発電のリースとは、リース会社が所有する太陽光発電設備を借りて利用する契約です。契約期間中は毎月固定のリース料金を支払うことで、太陽光発電システムを利用できます。
一般的な車のリースと同様の仕組みですが、太陽光発電リースの特徴的な点は、リース契約期間を終えるとシステムの所有権が契約者に移ることです。しかも、所有権が移るタイミングでも費用はかからないことがほとんどです。
リース期間と契約条件
太陽光発電リースの契約期間は、一般的に10年以上で設定されることが多く、5年から20年の契約期間が終われば、太陽光発電の設備が譲渡されます。
主な契約条件
- 契約期間:10~20年(事業者により異なる)
- 初期費用:0円
- 月額料金:固定制
- 契約終了後:設備の無償譲渡
- 中途解約:基本的に不可(違約金発生)
月々の料金相場|リース費用はいくらかかる?
住宅用太陽光発電の料金相場
リース契約での料金形態は、毎月固定の料金を支払う形態です。毎月の支払いは1万円以上のケースが多く、月額1万円から4万円程度が相場とされています。
より具体的には、料金を公開している販売店を比較すると、太陽光発電リース料金の目安は1ヵ月あたり1~2万円程度です。
設備容量 | 月額料金の目安 | 年間費用 |
---|---|---|
3~4kW | 10,000~15,000円 | 12~18万円 |
4~5kW | 15,000~20,000円 | 18~24万円 |
5~6kW | 20,000~25,000円 | 24~30万円 |
料金に含まれるサービス内容
リース料金には以下のサービスが含まれていることが一般的です:
- 太陽光パネル・パワーコンディショナー等の機器代
- 設置工事費
- メンテナンス費用
- 修理費用(故障時の無償対応)
- 災害補償・動産保険
- 定期点検サービス
太陽光発電リースのメリット|なぜ選ばれるのか
1. 初期費用0円で導入可能
太陽光発電のリース契約を利用する大きなメリットのひとつが、初期費用が無料になる「0円ソーラー」の存在です。太陽光発電システムの導入に、一般的に100~300万円ほどのコストが掛かります。
初期費用を用意できない場合でも、太陽光発電を導入できる点がリース契約の最大の魅力です。一般的に、通常購入した場合の太陽光発電の設置費用は112〜140万円かかります。
2. 売電収入を受け取れる
太陽光発電をリース契約すれば、発電分の売電によって収入を得られるメリットもあります。屋根貸しやPPAとは違って、太陽光発電システムで発電した分の売電料金は利用者に支払われます。
2025年度の売電価格
- 住宅用(10kW未満):15円/kWh(10年間固定)
- 2025年10月以降設置分:最初4年間24円/kWh、5年目以降8.3円/kWh
3. 住宅ローンへの影響がない
自分で購入する場合はソーラーローンなどを利用するのが一般的ですが、ソーラーローンは住宅ローンを組むときに影響を受けます。しかし、リース契約の場合は、住宅ローンの審査に影響がありません。
4. メンテナンス費用が不要
メンテナンス費用や災害補償などが付帯しているリース契約も珍しくないため、経済的に嬉しい要素が多いのはリースだと言えます。
メンテナンス内容
- 定期点検(年1~2回)
- 故障時の無償修理
- パワーコンディショナー交換対応
- 自然災害時の復旧サポート
- 24時間コールセンター対応
5. 法人は経費計上が可能
法人が太陽光発電を導入する場合は、毎月のリース料金を経費として計上可能です。リースによる設備投資では、月々のリース料金として全額を経費に計上できます。
太陽光発電リースのデメリット|注意すべきポイント
1. 長期間の契約縛り
多くのリース契約では、その間はリース費用がかかることになるため、リース料金で相殺され利益が少なくなる可能性もあります。リースの契約期間は一般的に10年以上と長く、中途解約もむずかしい点がデメリットです。
2. FIT期間終了後のメンテナンス負担
FITの期間が終わって売電価格が下がる段階になると、リース費用はかからなくなります。しかし、そのタイミングで太陽光発電設備が自分の所有になるので、メンテナンスも自腹になるのです。
3. 総支払額が購入より高くなる可能性
リース期間中の総支払額を計算すると、一括購入やローン購入より高額になるケースがあります。
10年リース契約の総支払額例
- 月額18,000円 × 12ヶ月 × 10年 = 216万円
- 購入価格150万円と比較すると66万円の差
4. 設備の選択肢が限られる
リース契約では、事業者が指定する太陽光パネルやメーカーからの選択となるため、購入時のような自由度はありません。
他の導入方法との比較|リース・PPA・購入・屋根貸し
リース vs PPA(電力購入契約)
項目 | リース | PPA |
---|---|---|
初期費用 | 0円 | 0円 |
月額料金 | 固定 | 使用量に応じて変動 |
売電収入 | 受け取れる | 事業者のもの |
電気使用の自由度 | 高い | 制限あり |
契約期間 | 10~20年 | 10~20年 |
リースとPPAはどちらも所有者が事業者で、契約終了後は利用者に受け渡されます。しかし、その間に発電した余剰電力の売電収入を受け取れるのはリースのみです。
リース vs 購入(ローン含む)
項目 | リース | 購入 |
---|---|---|
初期費用 | 0円 | 100~300万円 |
所有権 | 契約期間中はリース会社 | 最初から購入者 |
売電収入 | 受け取れる | 受け取れる |
メンテナンス | 事業者負担 | 自己負担 |
総費用 | 高い場合が多い | 安い場合が多い |
補助金 | 事業者が受給 | 直接受給可能 |
屋根貸しモデル
太陽光発電には「屋根貸し」と呼ばれる選択肢もあります。リース契約とは異なり、屋根スペースを太陽光発電事業者に貸し出すことで、「賃料」を受け取る仕組みです。
屋根貸しの特徴
- 屋根の賃料収入:年間1~3万円程度
- 発電した電気の利用権:事業者
- 設備メンテナンス:事業者負担
- 契約期間:20年程度
2025年度の売電価格とFIT制度の影響
最新の売電価格動向
2025年度の住宅用太陽光発電のFIT価格は、2024年度から1円下がり15円/kWhとなりました。ただし、2025年10月以降に設置すると、最初4年間の買取価格が24円/kWh(従来比60%増)となります。
売電価格の推移
年度 | 住宅用売電価格 | 前年比 |
---|---|---|
2021年度 | 19円/kWh | -2円 |
2022年度 | 17円/kWh | -2円 |
2023年度 | 16円/kWh | -1円 |
2024年度 | 16円/kWh | 据え置き |
2025年度 | 15円/kWh | -1円 |
FIT制度変更がリースに与える影響
FITによる電力買取は、20年間一定額の収益を確実に見込めるため、リース会社にとってはFITが適応出来るのであれば好材料だと判断されやすいのです。
2025年度の重要な変更点
- 設置容量が10kW~50kW未満の場合「余剰電力買取制度」が20年間適用されます。太陽光発電の発電電力の30%以上を自家消費する必要があり、自家消費量30%を下回る場合は売電の権利を剥奪される可能性があります
リース契約時の注意点とチェックポイント
契約前に確認すべき項目
1. 料金体系の詳細
- 月額料金に含まれるサービス内容
- メンテナンス費用の範囲
- 契約期間満了時の条件
2. 設置条件と発電量予測 太陽光パネルの発電が最も効率的に行われる屋根の条件は、「南向き」かつ「6寸勾配(約30度)」になります。
屋根の条件別発電効率
屋根の向き | 発電効率 | 推奨度 |
---|---|---|
南向き | 100% | ★★★ |
南東・南西 | 95% | ★★☆ |
東・西向き | 85% | ★☆☆ |
北向き | 60% | ☆☆☆ |
3. 保証内容の確認 保証適用期間と保証内容は十分か?自然災害補償はついているか?設置条件は満たしているか?補助金は利用できるか?
悪質業者を避けるためのポイント
注意すべき営業手法
- 極端に安い月額料金の提示
- 契約を急かす営業
- 詳細な説明を避ける業者
- 書面での契約条件提示を渋る
収支シミュレーション|リースは本当にお得なのか
一般的な住宅での収支例
設定条件
- 設置容量:5kW
- 月額リース料:20,000円
- 年間発電量:5,500kWh
- 自家消費率:30%
- 売電価格:15円/kWh
年間の経済効果
- 電気代削減:約6万円(自家消費分)
- 売電収入:約6万円(余剰売電分)
- リース料支払:△24万円
- 年間収支:△12万円
10年間の累計
- 経済効果合計:120万円
- リース料総額:240万円
- 実質負担:120万円
購入との比較
購入時の初期費用
- システム費用:150万円
- 補助金活用:△30万円
- 実質負担:120万円
この例では、リースの10年間実質負担と購入時の実質負担がほぼ同等となります。ただし、購入の場合は11年目以降も売電収入と電気代削減効果が継続するため、長期的には購入の方が有利になる計算です。
補助金制度とリース契約
2025年度の補助金動向
2025年度も国としても企業が脱炭素に向かう為の支援をしており、太陽光発電や蓄電池に対して大規模な助成金(環境省・経産省)が出ております。
主な補助金制度
- 国の補助金:環境省・経産省の脱炭素支援事業
- 自治体補助金:地域により異なる
- ZEH支援事業:新築住宅向け
リース契約と補助金の関係
購入する際、自治体や国が提供する補助金を直接受け取ることができるのも大きなメリットです。リースでは補助金の間接的な還元が一般的ですが、購入の場合は直接的なメリットを享受できるのがポイントです。
補助金活用の違い
導入方法 | 補助金の受給 | メリット |
---|---|---|
購入 | 直接受給可能 | 初期費用を大幅削減 |
リース | 事業者が受給 | 月額料金に反映される場合も |
リース契約に向いている人・向いていない人
リース契約が向いている人
こんな方におすすめ
- 初期費用を抑えたい方
- 住宅ローンの借入枠を温存したい方
- メンテナンスの手間を省きたい方
- 10年程度で引越しを予定している方
- 法人で経費計上メリットを活用したい方
購入が向いている人
購入をおすすめする方
- 長期間(20年以上)同じ住宅に住む予定の方
- 初期費用を用意できる方
- 補助金を直接受給したい方
- 設備の所有権にこだわりがある方
- 総費用を抑えたい方
よくある質問(FAQ)
Q1. リース契約中に引越しする場合はどうなりますか?
A1. 基本的にリース契約は中途解約ができません。引越しする場合は、残期間のリース料を一括支払いする必要があったり、設備撤去費用が発生したりする可能性があります。契約前に必ず中途解約条件を確認しましょう。
Q2. リース期間終了後のメンテナンスはどうなりますか?
A2. 導入から10年(あるいは20年)が経過すれば、機器に対するメンテナンス必要性も増えてくるため、リース契約のデメリットといえるでしょう。設備譲渡後は自己負担でのメンテナンスが必要になります。
Q3. リース料金は途中で変更される可能性はありますか?
A3. 契約書に記載された固定料金が基本です。ただし、契約条件によっては物価変動などによる調整条項がある場合もあります。契約前に料金変更の可能性について確認することが重要です。
Q4. 停電時でも電気は使えますか?
A4. 自立運転機能付きのシステムであれば、日中の発電時に限り最大1.5kW程度の電力を使用できます。リース契約時に自立運転機能の有無を確認しましょう。
まとめ|太陽光発電リースを検討する際のポイント
太陽光発電のリース契約は、初期費用を抑えて太陽光発電を導入できる魅力的な選択肢です。ただし、長期的な費用対効果や契約条件を十分に検討することが重要です。
検討時のチェックポイント
- 月額料金と発電量のバランス:リース料金に対して十分な発電量が見込めるか
- 契約期間と居住予定期間:引越しの可能性を考慮した契約期間の設定
- メンテナンス内容:どこまでがリース料金に含まれるか
- 契約終了時の条件:設備譲渡の条件や撤去費用
- 複数社での比較検討:料金だけでなく、サービス内容も含めた総合比較
太陽光発電の導入を検討されている方は、リース・購入・PPAなど複数の選択肢を比較検討し、ご自身の状況に最も適した方法を選択することをおすすめします。まずは複数の業者から見積もりを取得し、詳細な収支シミュレーションを行うことから始めましょう。